7月3日、新しいエネルギー基本計画が閣議決定された。これは、エネルギーを巡る国内外の情勢変化を踏まえ、2030年、更に2050年を見据えた新たなエネルギー政策の方向性を示すものとして、閣議決定したと説明されている。
その内容を見ると、2030年に向けた対応の中で、再生可能エネルギーを震災前の10%を22~24%に、原子力を震災前25%から22~20%に、化石燃料を震災前65%から56%にするとされた。原子力への依存度を可能な限り低減すると説明されているが、福島の原発事故による廃炉分を考慮すると、ほとんどの原発は再稼働させ震災前に戻す計画ということのように見える。福島の第2原発の廃炉決定に7年もかかっている。可能な限りとの説明は、積極的な努力目標を示すものではなく内容を曖昧にする。
関西電力の大飯原発の運転差し止め訴訟は、第1審の福井地裁で認められた差し止めが名古屋高裁金沢支部は、この差し止めを取り消し、住民側の請求を棄却した。その判決文は「原発の運転に伴う本質的、内在的な危険があるからといって、それが人格権を侵害するということはできない」「福島原発事故の被害に照らし、わが国の取るべき道として原子力発電そのものを廃止することは可能だろうが、その判断は司法の役割を超えており、政治的な判断に委ねられるべきだ。」と述べている。住民の求める具体的な内在的不安を否定し、その救済を政治的判断に委ねる今回の判断は司法権の放棄を意味する。最高裁まで判断は持ち込まれると考えられるが、生活する当事者である住民の声に耳を傾けていくことこそが司法の役割であることを願いたい。
エネルギー政策は、国の経済構造の根幹をなす。震災からの教訓から何を学ぶか、それがこれからの日本を方向付けて行くこととなる。国の政治判断は、3.11を局地的な自然災害として忘れ去り、震災前に戻すことを目指しているように思える。