春は桜、桜の花が咲き始めると本格的な春の到来である。寒さから解放されて人の心も解放的となる。例年だと福島市での開花は4月10日前後が、今年は3月末に開花と10日も早い。3月に咲いたというのは記憶にない。

震災と原発事故のあった3.11には、季節はずれの雪が降り、混乱が続く中でも桜は咲いていた。例年になく花は大きく鮮やかできれいだったことを思い出す。

人知を超えた自然の営みの不思議を思う。現代社会は、人の知識として理解できないものを存在しないものと考えてしまう傾向が強い。しかし、身近な桜の花と自然の営みの関係性、すでに人知を超えている。

桜は、大地に根を張り、毎年季節とともに変化し、花を咲かせる。自然の営みに逆らわず順応して生きている。いちど根を張ると、桜は自分で移動することはできない。その場所を受け入れ、根を張り、枝を伸ばしていく。

人もまた生命を育む大地の自然の営みの中に身を置いている。人間が自然を支配できると考え始めたときから自然環境の破壊は始まっている。人間も自然の一員として謙虚に振舞うことを桜は語りかける。自然の中に未知の発見はあるが、自然界に発明はない。自然に順応して行くことはできるが、自然を支配することはできない。

桜の花を眺めながら、命を育む大地の営みに耳を傾けなければならないと思う。