7月1日、ギリシャが債務不履行(デフォルト)状態に陥ったという話題が世界を駆け巡る。IMF(国際通貨基金)よりの借入が国として返済できなくなったということのようだ。ヨーロッパが通貨統合を行い、ユーロ圏を作ってきた。この構成メンバーであるギリシャ。これまでもデフォルトを起こした国はいくつもある。しかし、今回のギリシャは、ユーロ圏を巻き込むヨーロッパ全体の問題であり、世界への影響は、これまでの比ではないものと思われる。

政治的には独立を保ちながら、通貨だけを統合しユーロ圏を形成してきたヨーロッパ世界、通貨統合時から懸念されていた問題が現実化し、その対応を迫られている。通貨統合は、市場の統合を意味する。市場原理に任された経済活動では、富の集中をもたらし、時間の経過の中で地域間格差を拡大していく。地域が独立国であることから、地域間格差を是正する対策には限界がある。ユーロ圏が合衆国のような連邦国家としての政治的統合をはかるか、再びそれぞれが独立国としての新たな道を選ぶか、ユーロ圏全体に選択を迫られている。妥協の繰り返しは、ギリシャだけの問題ではなく、国家間の地域間格差による不均衡は第2、第3のギリシャ問題を発生させていく可能性が高い。

市場原理による自由競争社会がもたらす矛盾を調整し、自国の国民を守るために近代国家は成立した。国は「公共の福祉」のためには、国民の財産を強制的に徴収できる権利(課税権)が与えられている。しかし、徴収した財産をどう使うかも国に任せれている。政策を間違うと矛盾の拡大に繋がる可能性もある。グローバル化といわれ、世界が一つの市場として自由に巨大資本が闊歩する世界となった今、巨大資本はますます巨大化し、国境を越えてその格差を広げていく。国の役割とグローバル化した市場経済、経済至上主義がもたらす矛盾は、原発事故からギリシャ危機まであらゆる場面で噴出している。国の役割の大きさとその舵取りの難しさを思うとき、舵取りを間違いないことを切に願うのみである。