自然循環菜園~無肥料、無農薬で野菜づくり~

現代の農業は工業製品のような作物を作ろうとしていると感じています。昭和ごろは電化製品なども修理しながら使い、物を大切にしていた印象がありました。令和の現在は部品も複雑になり、買い替えた方がコストパフォーマンスの良い時代になりました。
作物の工業化というのは、農地を単一作物で大量に作り、採れすぎれば廃棄してタネはF1種や遺伝子組み換え、ゲノム編集。確かに消費者にとっては安ければ良いと考えてしまいがちですが、肥料、タネ、輸入作物などはこれからもずっと入ってくるのでしょうか。
今、中国とは気まずい関係となりつつあり、また台湾有事のおそれもあります。
最悪の事態になったときのことも考える必要があるのではないでしょうか。
今回は無肥料、無農薬で野菜がつくれる自然循環のしくみをお伝えしたいと思います。
自然循環菜園の金言集
- 野菜づくりは「命のリレー」
- 害虫も益虫も、病原菌もいて、たがいにけん制し合っている
- 二十四節気は、いつ・何を行えば、野菜が育つかを指し示した、いわば「農作業の羅針盤」
- 人がどうしてもあらがえないのは太陽の動き
- 緑肥作物を育てるのは、微生物を飼っているようなもの
- 人間と野菜の成長
- タネができるということ
- 土の状態を「見える化」する
野菜づくりは「命のリレー」

「1つの野菜を育てて収穫したら終了」ではなく、その野菜が残してくれた土壌環境や残りかすなどの有機物を活用して次の野菜を育てる。これを絶え間なく何年も繰り返すことで、肥料も堆肥も使わない、病害虫も発生しない、最高の土ができあがる。
通常なら1年単位で作付けを考えるが、循環菜園は違う。2年、3年、4年と何年もぐるぐると繰り返される。まるで太陽のまわりを回る地球のよう。
害虫も益虫も、病原菌もいて、たがいにけん制し合っている

だから病害虫が発生しても一部だけで、あまり広がらない。
病害虫は「主因」「素因」「誘因」の3要因で発生する。
- 「主因」とは病原菌や害虫などの存在そのもの。病気の葉を畑の外に捨てたり、虫を捕殺、天敵を呼び寄せて個体数を減らす、などがある。
- 「素因」とは病害虫に侵されやすい野菜の性質。病害虫に強い品種を選んだり、野菜を丈夫に育てることで、このリスクを減らすことができる。
- 「誘因」とは、病害虫が発生しやすい環境。
風通しが悪い、日当たりが悪い、水はけが悪いなど、適地適作で作られていない場合にリスクが高まる。
畑の外周にソルゴー、キュウリやナスなど夏野菜の畝の通路にエンバクを育てる。ソルゴーやエンバクはてんとう虫やクサカゲロウなど益虫のすみかとなり、これらの天敵に捕食されて害虫の数が減る。主因を減らし、畑の生態系が豊かになることで誘因のリスクも小さくなる。
二十四節気は、いつ・何を行えば、野菜が育つかを指し示した、いわば「農作業の羅針盤」

1年のうち、春分と秋分が大きな区切りになる。農家は春分を1年の始まり、秋分をその折り返しと考えてきた。春分の頃から春夏野菜、秋分の頃に秋冬野菜の種まきや植えつけを本格化させる。
また、種の袋に書かれているまき時を参考にしたり、その土地の農家にいつまいているのか聞くと、よりポイントが絞られる。例えば、福島市内中心部と吾妻山のふもとでは標高も違うため、2~3度の気温差がある。
暦の上では立春・立夏・立秋・立冬で春夏秋冬が分かれる。わたしたちの実感よりも暦の上では季節の移り変わりは早い。暦に基づいて早め早めに作業を計画することがたいせつ。
『二十四節気における四季の区切り』
- 「春」2月3日ごろ(立春)~5月4日ごろまで
- 「夏」5月5日ごろ(立夏)~8月6日ごろまで
- 「秋」8月7日ごろ(立秋)~11月6日ごろまで
- 「冬」11月7日ごろ(立冬)~2月2日ごろまで
人がどうしてもあらがえないのは太陽の動き

そう考えると、光と温度をてんびんにかけた時に制御しにくいのは光となる。まずは太陽の光に合わせて農作業を行い、温度はそのつど人の手で調整していけばよい。
冬至から春分まではしだいに長くなる光を利用する。トンネルフィルムや不織布で保温して、野菜の生育に適した温度環境を整える。
2月後半、雨水の頃にジャガイモの種イモを3~4週間、光に当てて芽出しさせてから植える。寒い中で発芽した芽は、頑強に育つ。
3月上旬、啓ちつの頃、レタスやキャベツなどの植えつけができる。立春を過ぎたら温床で育苗を始めると、ちょうどよい苗ができる。
トマトやナス、ピーマンなど夏野菜の育苗期間は60日~80日と長い。立夏の植えつけをめざし、逆算して育苗を始めよう。
緑肥作物を育てるのは、微生物を飼っているようなもの

緑肥作物の役割は、畑を肥やし、また雑草を抑制する。さらに害虫予防にも役立つ。ソルゴー、エンバク、ヘアリーベッチがよく知られている。
それらの根のまわりに微生物や土壌動物が集まり、腐食質が増えて土がふかふかになる。養分の循環も早くなる。
人間と野菜の成長

人間でいうと、発芽したばかりの子葉は赤ちゃん。苗は小学生に例えることができる。小学生ぐらいなら、お腹が空いたら自分で食べようとするし、虫が飛んできたら手で払おうとする。野菜も同じで、苗は活着するとみずから畑の環境に合わせて生長しようとする。
タネができるということ

作物にとって種をつくることが最もエネルギーを必要とする。若さやをとることで株の負担が軽くなり、長期にわたってたくさんのさやを収穫できる。一種の追肥だと思って、取り遅れないようにしたい。
土の状態を「見える化」する

ほうれん草と白菜の出来で土の状態がわかる。ほうれん草の生育が悪ければ土が酸性に傾いている可能性が高いし、白菜が結球しなければ総じて、地力が低いことになる。
草の種類によっても現在の土壌の状態がどの段階であるかを知ることができる。
酸性土壌に強いといわれているのが、スギナ、ドクダミ、メヒシバなど。
ただし、生えていたら必ず強酸性というわけではない。
酸度中程度では、カラスノエンドウ、ツユクサ、シロツメクサ、スベリヒユなど。
酸度の低い所では、ハコベ、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、タンポポなど。
また、耕起するしない、水はけが良いか悪いか、でも植生が変わってくる。
対象作物を決めたら、その作物はどのような自然環境を好むのかを調べると自ずと失敗が減ると思われる。
最後に

今回は自然循環菜園という題でお伝えしましたが、「自然〇〇」という栽培方法を調べると、たくさんの方法が検索できます。ですが、ぜんぜん何もせず自然に作物ができるわけではありません。放任ではなく適切に何らかの手を加えることが基本になります。
自然の力を生かす様々な工夫を重ねる、そうして作物を育てると、土の生き物たちが増えていきます。その働きによって土はフカフカで養分を保持しやすく変わって、さらに作物が育ちやすくなります。土の中だけでなく菜園全体の生き物も多様性を増し、お互いに支え合ってバランスを保ちます。害虫が増えれば益虫が増え、健康な作物は病気になりにくい作物になります。
自然は語ってくれませんが、農薬や除草剤を撒き散らされてもじっと耐え、私たちの行いを見ています。地球はひとつの命、ガイアという考え方もあり、人間がガン細胞のような存在として思われないような生き方をしていきたいと思います。
タネや家畜は遺伝子組み換え、ゲノム編集によって人間の都合の良いものになっていき、人工知能、ドローン、農業機械の遠隔操作などによって、私たちは一部のグローバル企業の奴隷になってしまう現実が想像できます。
この野菜はどのように育てられたのか、この肉となった動物はどんなものを食べて、どのように育てられてきたのか、そこまで考え選ぶことのできる世の中にしていかなければ、生命の循環さえも止まってしまうと思います。
土壌を汚し、遺伝子を操作して生命を傷つけると、それは必ず人間に帰ってきます。
フードテック(食×テクノロジー)の安直な拡大がいかに危険か、従来の産業の衰退とその重要な役割の損失を招いてしまうのかを考えていかなくてはいけません。


