9月の満月が秋の夜空を照らす。中秋の名月、お月見をするくらいのゆとりを持ちたいものである。気がつくといつの間にか満月に、スイス旅行の一週間で半月が満月に、スイスで見た月と福島の戻ってみる月、時間の流れと環境の変化の中で、満月に旅の思い出を思う。

スイスと日本の国交150周年の年に当たるという。福島からの民間交流使節団という仰々しい大義名分を掲げていたおかげで一般の観光旅行では体験できないような部分もあった。しかし、一番の成果は、現場に立ち、歴史の流れの中で作られてきたスイスの現実を知ることができたことである。永世中立国として、平和を得るための多大な対価を国民一人一人が負担しながら獲得してきた歴史、今でも国民の重要事項は、国民投票で決定され、年に数回は行われているという。直接民主主義によって、政治への参加意識は高まる。それが地方政府(スイスは連邦国家で生活に直結する事項は州政府が行っている。)の政策に直結し反映されていく。スイスの高齢化は進んでいるが、日本のように問題化していない。高齢化すれば施設が用意されており、財産のあるうちは負担し、無くなれば国が福祉政策の中で面倒を見るのが当たり前の社会となっている。本人や家族への過重な負担を与えない地域社会のシステムがセーフティネットとして整備されている。学ぶべき点は多い。 レマン湖湖畔に広がる世界有数のリゾート地ローザンヌ、城塞都市の面影を色濃く残すスイスの首都ベルン、中世から近代の激動の中で生き抜いてきたチューリッヒ、歴史の重みを現代に伝える世界遺産群。これらの文化を維持していくことは、そこに住む住民の主体的な行動と多大な犠牲を伴った歴史の上に成り立っている。与えられるものではなく、そこに住む住民一人一人の判断と行動が支え続けてきた歴史の重みを考えなければならない。

満月は、これから欠けていき、それは次の満月を準備する。私たちの社会を他の地域との交流を通して見直していくことの重要性を改めて再確認する旅となった。