師走を迎えた。今年も残す日があとわずか。カウントダウンが始まる。今年も無事、年を越せることを願う。
年末の民友新聞に「貧困の現実」という連載記事が10回連続で掲載された。「子どもに未来を」として「子どもの貧困」を取り上げたものである。母子家庭に恒常的に生じている「子どもの貧困」、これに対する周囲の無理解によって追い込まれていく負のスパイラル。子どもを抱えての労働環境は厳しく、共稼ぎでやっと普通に生活できる現在の労働環境では、母親だけの働きで生活していくことが困難な社会となっている。離婚率は年々高まり、核家族化と親の高齢化から血縁による支援も受けにくく、社会のセーフティーネットも希薄となっている。
原発事故からの避難と家族の分断、子どもへの健康不安を考える妻と仕事を優先する夫、母子避難、別居、離婚、家族の絆は弱まっていく。この時期に県外避難者の子どもたちへのいじめも各地で問題化してきている。周囲の無理解が差別を生み、子どもたちを追い込んでいく。
環境を受け入れるしかない子どもたち、周囲を取り巻く人々との関わりの中でその環境はつくられる。夫婦の合意で生まれた子どもに、子どもの意思とは関係なく、離婚、親権をめぐっての親たちの争い、そして母子家庭の誕生。経済基盤を失った母子には厳しい状況が待っている。貧困によって子どもたちは、子どもたちの世界における、仲間はずれ、残酷ないじめの対象にもされていく。
子どもを育て安心して生活できる社会、家族が仲良く楽しく生活できる社会、なぜそんな社会にならないのか。マイホームの宣伝のキャッチコピーのようで、みんなが憧れながら実現するのは難しい。相手を思いやる気持ちがあれば、困っている人への手助けはしてもいじめはない。しかし、放射能は危険、離婚は悪である、その社会常識が、立場により行動を二分する。自分たちは安全な場所にいる、正常な家庭環境にあると思っている者にとっては、それは排除すべき対象となり、そこから差別が始まる。大人社会の反映として子ども社会にも波及する。
大人社会が襟を正し、相手を思いやる気持ちをもち、こども、両親、祖父母が仲良く生活しながら、地域社会にセーフティーネットを張り巡らしていくための努力を意識して行っていくことが必要に思う。子どもは両親の宝であると同時に地域の宝でもあるのだから。