5月3日は、憲法記念日。憲法記念日には、憲法を守ろうとする護憲派の集会と憲法改正を目指す改憲派の集会が全国で行われた。毎年の年中行事化しているようにも見えるが、状況は改憲に向けての動きを確実に加速してきているようである。
安倍総理が憲法改正を訴える「美しい日本の憲法をつくる国民の会」にメッセージを送り「2020年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と表明したと報じられた。戦争放棄を定めた9条を維持した上で自衛隊の存在を明記する文言を追加するということである。この内容についての自由民主党の日本国憲法改正草案は、平成24年4月27日決定されていた。これによると現行憲法の第2章「戦争の放棄」が、草案では「安全保障」となり、9条の1項2項の内容は、大きく変わっている。戦争の永久放棄から自衛権の発動を容認するものとなり、このための「国防軍」として「自衛隊」が明確に位置づけられている。
この草案が、自由民主党において決定されてからすでに5年が経過している。改正草案と現行憲法との対照表も公表されている。しかし、ほとんどの国民はその内容を見ていないと思う。今回の報道から改めて危機感を持って調べてみると、ほとんどの条文が書き換えられている。現行前文は、「日本国民は、…ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その福利は国民がこれを享受する。…」と書かれているが、すべてが書き換えられ「日本国は、…三権分立に基づき統治される。…日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。」となっている。日本国憲法の素晴らしさの1つが、日本国憲法は国民からの厳正な信託を受けていることに対して国が国民に対して果たすべき責任を明確にしたものであり、民主主義憲法としてすばらしいものであると学んできた。
国と国民との関係が逆転し、十分な議論もないままに改憲の可否のみが独り歩きしていくことは避けなければならない。憲法以外の法律は、国会の承認を得て、国民に公布され、国民の守るべき規範となる。憲法は、国民が国に課した責任を明確にする法律でその役割が全く異なる。憲法の重みを考え、日本の民主主義の発展のため、建設的な議論が積み上げられていくことを願う。