金融庁の金融審議会は、6月3日、長寿化による「人生100年時代」に備え、計画的な資産形成を促す報告書をまとめたと4日の朝刊一面で報じられた。その見出しには「年金頼み限界、夫婦で95歳まで生きるには2000万円蓄え必要」と。政府が公的年金制度の限界を自ら認め、国民に自助努力を求めている。
この報告書は、金融庁の中に設けられている金融審議会の市場ワーキンググループがまとめた「高齢化社会における資産形成・管理」という報告書である。その中で、高齢化社会を取り巻く環境変化について、人口動態、収入支出の状況、金融資産の保有状況、金融環境に対する意識の4つについて今後の見込を確認するとしてまとめられている。
人口動態から「人生100年時代」を迎えるとし、少子高齢化社会の姿を核家族と単身世帯の増加、認知症の増加等と厳しい現実をまとめている。特に、収入支出の面からは、高齢夫婦無職世帯の平均的な姿で見ると、年金給付だけでは毎月の赤字額が5万円となると試算し、この毎月の赤字額は自身が保有する金融資産より補填することとなるとしている。この補填額が、20年では約1300万円、30年で約2000万円となるということのようである。この2000万円を蓄えるためには「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」ことを求め、「自助」による資産形成が必要であるといえるとしている。見出しの意味が見えてくる。
平均的な高齢夫婦世帯で2000万円の貯蓄を確保できる世帯はどれだけいるのだろうか。定年後の収入を年金だけに依存すると確実に貧困世帯となる。結婚をしない単身世帯、独居老人、老人を取り巻く貧困問題を政府自ら認め、自助努力による貯蓄の推奨だけに終わっている当報告書は、政策の貧困を露呈しているようにも思える。40代からせっせと貯蓄に励まなければ人生100年時代を安心して迎えられない。これにより奮起して貯蓄に励むことになるのか、未来への不安を煽ることになるのか。60代からではもう間に合わない。
子どもから老人まですべての人々が、社会全体で支え合うシステムを根本から問い直すべき時期に来ている。