月日の立つのは早い。新年を迎えたと思っていると、あっと言う間に5月のゴールデンウィークを迎えている。連休が続くこの季節は、日に日に陽気は暖かくなり、どこかへ出かけたくなる。ところが、コロナの影響で首都圏を始め主要都市が緊急事態宣言下で行動を自粛されている。行動を制限されていると、日常の変化が失われ記憶に残るものが減っていく。カレンダーの枚数だけが減っていく。

今年は、机の上に「週めくり金次郎語録」というカレンダーが置いてある。5月の一週目の言葉は「むかし蒔く木の実、大木と成りにけり、今蒔く木の実、後の大木ぞ」。その説明に「昔蒔いた種が今の大木となり、今蒔く種も将来の大木になる。しかし蒔かない種は実ることはない。常に先のことを考えて行うことが肝要である。」と書かれている。

昔蒔いた種は、大きくなるが、その種が全て良い種とは限らない。福島第1原発で増え続ける放射性物質トリチウムを含む処理水の問題、原発事故への国の責任の放棄と原発再開方針が10年間の時間の中で政府への不信感を大きく育て、置き場所がなくなるという理由だけで決定する姿勢は不信感へ油を注ぐ。蒔かない種は育たない。信頼関係を取り戻すためには、原発事故への国の責任を認め、国民への誠意を示す種を蒔かなければ信頼関係は育たない。

時の経過の中で新たな事実は常に明らかとなる。過去の判断の誤りを変えていくことは、将来を考えて、新たな種を蒔くことである。原発事故もコロナも決定された事実に縛られ新たな検討がされないままに時を重ねている。渋沢栄一にも影響を与えたという二宮金次郎の言葉に耳を傾けると、目先の問題に翻弄され、先への判断力を失っている現在の姿が見えてくるように思える。迷ったときは謙虚に先人の声に耳を傾けたいとおもう。