6月に入り法案成立の記事が目立ち始めた。G7広島サミット(5/19~21)も終わり、本格的な国会の季節を迎えている。
現在行われている国会は第211回通常国会、令和5年1月23日より始まっており会期は150日、延期や解散がなければ6月21日で閉会となる。それまで法案成立ラッシュが続くものと思われる。今後の政策運営の最も基本とされていく「骨太方針」(首相が議長を務める経済財政諮問会議の発表する「経済財政運営と改革の基本方針」)も会期末までには決定される。首相の専権事項と言われる解散権の発動の有無も絡み政治から目が離せない。
1日の朝刊(福島民友)の記事に「エネルギー関連の5つの法改正をまとめ、原発の60年超運転を可能にする『GX(Green Transformation)脱酸素電源法』が31日、参議院本会議で、与党と日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。」と報じられた。これにより原発の60年超運転が可能になる。この運転期間の規定が「原子炉等規制法」から「電気事業法」に移され、この延長に関わる認可の権限が経済産業相となったという。この理由は、「脱炭素とエネルギーの安定供給を理由に抑制的な原発政策を転換した。」と説明されている。電気自動車をはじめとする電気需要の拡大を促進させながら、この安定供給のための電源として原発を位置づけ、安全性を度外視した運転期間の延長、次世代型原発の開発・建設も行っていくことを、2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」の中にすでに盛り込まれており、原発に対する政策転換のための法整備はこれでほぼ終了した。
3日には、2日に「福島復興再生特別措置法」が改正され、帰還困難区域内に新たに「特定帰還居住区域」を設定できるようになるということである。しかし、誰が帰還するのだろうか?水素をはじめとする新たなエネルギーの開発供給拠点として、住民のいない広大な地域を使った新たなリスクをともなう産業開発拠点として、新たな利活用が始まっている。原発立地で経験してきた過疎地の悲劇を繰り返すことのないように願いたい。
2日には、健康保険証を廃止してマイナンバーカードの一本化するマイナンバー法などの改正関連法も成立した。この関連法の内容を確認してみないとマイナンバーカードの役割の全体像が見えてこない。国民全員にマイナンバーが付されていることとカードの役割は全く異なるものである。健康保険証は、国民皆保険の日本では個々の国民を特定する既存のマイナンバーカードにほかならないと思う。マイナンバー付の保険証になりましたとはならずに、保険証を廃止してなぜマイナンバーカードとなるのか。全体像が見えないマイナンバーカードを個人の意思に基づき取得させようとするところに一抹の違和感を覚える。これが、国民への行政サービスを効率化するためのマイナンバーから国民監視のためのマイナンバーへの政策転換とならないことを願う。