自民党が大敗し過半数割れとなった石破総理が率いる内閣、解散後初めての本格的な国会となる第216回臨時国会が11月28日に召集され、11月29日には所信表明演説、12月2日から4日にかけて各党の代表質問が行われた。12月中の政治日程では、補正予算、2025年度予算、2025年度の税制改正大綱の成立を目指しているという。

「103万円の壁」を訴え大躍進した国民民主党、政策内容で連携すると自公の連立与党に仲間入り、これがどのように税制改正大綱に反映してくるのか。減税政策を訴えるためのキャッチコピーとして用いられた「103万円の壁」、その効果は大成功であったと言えそうである。物価上昇、生活苦、貧困、諦めていた人々に、ストレートに減税政策をアピールした103万円の壁、課税最低限の周辺で税金を徴収されている人たちの大半は、源泉徴収により税金を払わされている感が強く、税金の種類や制度に無関心の人も多い。「103万円の壁」は、103万円の限度額が上がれば税金の源泉徴収額は減り、その分手取額は増える。そこには単純化した図式に先導されやすい現代社会の状況を反映しているかのようにも思える。

国民の安全と利益を守り、生活苦や貧困にあえぐ国民をなくしていくことは国の責務である。そのための政策を審議決定していくのは国会の役割となる。政党は、この政策に対して共通の立場にある議員が集まり結成される。一党独裁化する中では、政策集団が派閥を形成し疑似政党化する。国の財源の多くは税金として集められ、国の経済政策・福祉政策等に基づく予算計画により政策現場に配分される。税制改正は、この国の収入と経済政策・福祉政策の現場に直接的に大きな影響を与えるものである。

国税の主なものとしては、所得税・法人税・消費税、それに相続税がある。これらは本法の規定と租税特別措置法により税額を算出する。租税特別措置とは、何らかの政策目的の実現のために特定の条件を満たした個人・企業に税負担の軽減・加重を行う政策税制措置。この内容は、経済政策と福祉政策に大別されるが、内訳を政策目的別分類でみると企業支援の項目が85項目中40項目を占めているという。ここに企業による政治献金を生む温床があると見ることができる。予算と税制は、経済活動に大きな影響を与え、一党独裁の長期政権下では、政府と癒着する企業の利権を生み出す。これに対する警鐘が今回の総選挙の結果と考えれば、今こそ、国会には、国民の生活現場から原点に戻り政策を見直していく姿勢が問われている。特に地域福祉と防災については、生活現場を守る住民の意思を大切にした地方分権の視点からの見直しが求められるものと思われる。