アメリカのトランプ大統領が1月20日に就任し、連日のように新聞の紙面を賑わしている。アメリカ第一主義を掲げ、前政権の政策を次々と変えていく。日本の議院内閣制と大統領制での政策決定・執行の違いを強く感じさせる。大統領令に署名するとただちに行動に移される。
1日、中国、メキシコ、カナダに関税を課す大統領令に署名した。メキシコ・カナダには25%、中国へは10%の追加関税を課すと報じられた。この発動は1日ではなく4日からとされ、その後カナダ・メキシコ首脳との協議で1か月間延期する大統領令が3日に出され延期された。中国への関税強化は発動され、米中経済戦争は新たな段階を迎えた。
アメリカ第一主義を実践するトランプ流強権外交は、敵をとことん追い込み寸止めし服従を迫る。この手法は、世界の歴史においては常に繰り返されてきている。ロシア、中国、イスラエル、大国の自国第一主義が紛争の背景にあり、これに正面切ってアメリカも参戦した形と見て取れる。国連等の様々な調整機能を失うと最終調整としての軍事衝突となる。大国間の直接的軍事衝突は、周辺国を巻き込み世界滅亡への道を歩ませることとなる。
関税について考えると、人類が国を作り始めたころにまで遡る最も古い税の一つと言える。国家間で、外国から国内にものを持ち込む者に対して、国の意思で課税負担を求めることができ、これは課税自主権と言われる。幕末の不平等条約ではこれが認められず、課税自主権を諸外国に認めさせることが明治政府の重要課題となっていた。課税自主権を認め合うことは、国として対等に尊重し合うための前提となる。しかし、輸入する側と輸出する側とは、市場経済の裏表であり、一方的な判断だけで取引は成立しない。
関税の強化は、対外的な輸入制限と国内産業の保護、関税収入の増加を国内産業へ振り向けることで産業育成財源を確保できる。しかし、輸入商品の価格高騰は国民の生活を圧迫する形で負担を国民に転嫁されることとなる。国内産業の保護のための価格調整の範囲を超えた一方的な関税強化は、国際的な経済対立を深めていくこととなる。寸止めが失敗したときのリスクは計り知れない。