福島市の先達山に建設されてきた大規模太陽光発電所(メガソーラー)が、9月30日から商業運転に移行し東北電力ネットワークへの売電を開始した(福島民報10月1日朝刊)。吾妻山のすそ野に広がる先達山は、福島市民にとっては当たり前のように眺めてきた山の景観の一部。雪がとけ、新緑が山を覆い、紅葉の季節を迎える、1年間の動きを山の変化に季節を感じながら暮らしてきた日々の生活。それが、急激に崩れていくさまを目の当たりに見せつけられている思いがする。

太陽光発電は、原発事故の教訓から再生エネルギーへの転換を進めるとの政治的判断の中で積極的に進められてきた。15年が経過し、耕作放棄地、閉鎖されたゴルフ場、手入れされなくなった民有林、身の回りを見渡すとソーラーパネルが目に入らない景観を探すのが難しい姿となっている。

先達山のメガソーラーは、2021年11月に着工されている。それが2025年に完成し、さまざまな問題が表面化してきた。事業者の開発の動きは2018年から始まっていたという。2019年以降、事業者は環境影響評価制度に基づき「方法書」「準備書」「評価書」を作成し縦覧を実施し、その過程で市民からの懸念の声が寄せられていた。しかし、市民の多くは、山肌から木が消えて土が見えてきたことで異変に気がついたというのが現実である。そのやさきに、大雨で土砂が流れているという事態で問題が表面化する。問題の重大さに慌てた福島市は、メガソーラーの動きを規制する条例を策定することになるが、手続きに不備もなく認めてきた福島市にとっては既に手遅れである。

原発からの転換であるはずの再生エネルギーとしてのメガソーラー。それがエネルギー基本計画では原子力発電の推進が明確となる。国の基準を満たすメガソーラーは、地域の環境を大きく変化させ、郷土の大自然が失われていく。

まだ間に合うことを信じて、先達山が悪しき先進事例として、これからの国の基準策定に生かされていくことを願う。