2025年、新しい年を迎えた。1日は能登の大地震から1年、能登地震から1年後の復興状況や課題が元旦の新聞の特集記事として組まれている。14年前の東日本大震災の記憶が蘇る。巨大地震は、一瞬にして生活の場を破壊し、甚大な物的・人的被害をもたらす。そこで生き残った人々は、その後の世界を生き続けなければならない。過去には戻れない現実の中で、一人一人の記憶と課題を抱えながら。

生活の場における復旧・復興・防災・生活再建、同じようでありながら何が違うのかを考えておくことは、これからの社会を身近に考えて行くためのキーワードとなるのではないかと思う。復旧は、土砂崩れ、建物の倒壊、道路・水道・電気、社会生活を支えているインフラの回復を意味し、復興となると、復旧したインフラの下で産業が復活し、災害前の経済活動が再開していく状況を指す。復旧・復興は、地震発生後の取り組みとなるが、防災は、地震発生前において被害を最小限にするための取り組みとなる。

防災への取り組みは、生活の場を守るために、住民が主体的に考え行動していかなければならない課題と既存の災害から学んだ課題を融合していくことが大切である。既存の阪神大震災、東日本大震災の2大地震が残した教訓をどこまで生かせているのだろうか。阪神大震災から生まれたNPO法人、住民が主体的に公益的な活動を行うこと目的として制度化されながら、社会的な支援と理解が不十分なために充分に機能しきれていない。東日本大震災は、地震による津波が原発事故を誘発し、甚大な2次災害を引き起こした。「南海トラフ臨時情報(巨大地震注意)」が政府から発せられながら、14年を経過し事故前の原子力政策に完全に復帰、原発事故再発のリスクが高まっている。広範囲に整備拡大された社会インフラは、便利で快適な大都市の生活を維持しながら、その裏に潜むリスクを問題としない。

防災では、住民の生活と命を守ることを目的に、人災として災害が拡大する可能性を事前に考え対策を立てておくことである。具体的には、その地で生きてきた先人たちの記憶と経験も活かしながらその地域にあった防災計画を立てていくことが重要となる。土砂崩れや洪水は地域の伝承の中で確認されることが多い。生活領域を超えたインフラ(電気・水道・ガス・下水)は、災害時には最も弱く復旧に膨大が経済負担を伴うこととなる。生活領域単位でのインフラの再構築も必要(集会所単位で井戸を整備等)ではなかろうか。

地震により生活環境が破壊されても、人は生きている限り生活の場を再建していかなければならない。これまでの土地での生活が再建できなければ、その土地を離れて移住を余儀なくされる。そこでは、一人一人に寄り添った生活再建とそのための福祉サービスによる救済が重要となる。

過去の教訓を活かした防災対策と一人一人に寄り添った救済、これをどう実現していくのか。新年に当たり真剣に考えていかなければならない国民的課題である。