「自然と人間とのつながり」~ミツバチおじさんの森づくり~

今回は「ミツバチおじさん」こと吉川浩さんの本、ミツバチおじさんの森づくり、ニホンミツバチから学ぶ自然の仕組みと生き方から考えを深めたいと思います。

都会から自然に委ねた生活へ

吉川さんは大阪に住んでいて、仕事場も近く、買い物も交通も便利でした。しかし、歳を重ねるごとにそれを「不自由」と感じ、50歳の頃、半自給自足的な生活を目指して奈良に移り住みました。

作物は人間が作っているものだと思っていましたが、それはまさに自然が育んでくれる「自然の恵み」だと気づきました。

私たちは「生活の豊かさ」を求めて働きますが、都会の生活は豊かさの意味を分からなくさせます。

誰かが海や山や海外から運んできたものを買って食べています。生活するために家賃や光熱費を支払います。
これは、お金がないと行き場がなくなる生活といえます。溢れるほどのものはあっても「自然の恵み」がない都会暮らしに、逃げ場のない「不自由さ」を感じるようになりました。

ある時、好きな漬物を買おうとして原材料名に目をやると、色々な化学薬品・合成着色料・保存料・添加物類が入っており、その漬物の「薬漬け」味に我慢ができなくなってしまいました。

また、スイカが好きでしたが、我慢できない程の化成肥料の味のするスイカがあり、食べられなかったものもあったようです。

農地を探し、そこで自然農法を続けていると、田んぼと畑は川や森とつながっていて、太陽や雲、多様な生き物たちともつながっている「一体感」を感じ、農作物からカロリーやビタミンなどの栄養分を摂っているだけではないことに気づきました。

安全な自然農法の田んぼや畑には、たくさんの酵母菌・乳酸菌・納豆菌などの微生物が棲んでいます。そこでできた農作物にはその微生物が付着し、それを摂ることで腸内細菌として取り入れられていることがわかりました。

自然の力を味方につけるための自然農法は、単に安全な農作物をつくるための方法というだけでなく、実は「土と腸をつなげるための農法」であり、自分の腸の健康な環境づくりだと気づきました。

また、雨が降らない、水がない状況を何度も繰り返すうちに、自然に委ねるということは、その結果がどうであれ「受容する」。
自然環境の変化はどうしようもありません。祈るしかないのです。

吉川さんはテレビでニホンミツバチ養蜂が自然農法に似ていることを知り、ニホンミツバチの「自由さ」に強くひきつけられました。
私たちは「得る」ことを目的として働きますが、ニホンミツバチは、野山の草木に受粉という「与える」役割を担いながら、蜜を集めて「得る」生き方をしています。そこに畏敬の念さえ感じ、「自然とつながる養蜂」をやろうと心に決めました。

農薬散布の現状と安全性の問題

2006年ごろから、蜂群崩壊症候群(CCD)が、アメリカを中心にヨーロッパ、日本などでダニやネオニコチノイド系農薬などの複合的要因で起きたといわれています。

農作物の害虫の脳をまひさせ、正常に働けなくさせて駆除する農薬ですが、ミツバチが浴びると巣に戻れなくなる症状が出るそうです。

養蜂業者は、ミツバチを守るためにネオニコチノイド系農薬の使用を止めさせてほしいと訴えていますが、実際は農業従事者の組織力が強いため、なかなか受け入れられないようです。

自然と安全を尊ぶ者から見ると、このような経済活動は、個々人の利益追求であって、自然生態系にとって悪いことはあっても、いいことはないのです。

日本の森の危機

  • 森が消える:環境要因
    • 自然の森を保護・再生する時点で、ニホンミツバチなどの野生のポリネーターの繁殖環境づくりを行う必要がある
  • ミツバチ感染病:制度要因
    • ニホンミツバチが感染病で壊滅的なダメージを負っている事実を公的機関は把握していない。ニホンミツバチ養蜂家もセイヨウミツバチ養蜂家も、家畜衛生保健所に届け出を
  • ミツバチの誤解:教育的要因
    • 日本の自然環境において、在来種のポリネーターの存在と役割を伝える。木を植えるだけでは、生態系のある自然の森はできないことを伝える必要がある

私たちは誰しも、自然の恵みをいただいて生きています。しかし、自然環境がどうなろうと自分の得しか考えない人たち。ミツバチと蜂蜜にしか興味を持てない養蜂家たち。
恵みをもたらす自然環境にとって大切なポリネーターが壊滅的な状況なのに、国や多くの行政、メディアを含め、日本人の「ミツバチの誤解」は、多くの自然への誤解を生んでいます。

死んでいくニホンミツバチを前に、「自然生態系への無理解」をどうにかしなければなりません。

ミツバチと森は繋がっている

吉川さんは、ミツバチなどのポリネーター争奪戦の勝敗によって、その地域の植生が決まったのではないかと考えています。それぞれの環境で虫媒花や動物媒花とポリネーターとの共生関係を築いていった結果、日本の植生分布が決まっていった。ポリネーターは日本の自然環境に影響し、その景観や、ひいては日本文化にまで影響しているのではと想像されています。

豊かな森に雨が降ると、葉っぱや枝とともに土が山から流れ落ちます。それらは川の生態系の栄養源となり、水生昆虫や川魚の餌となり、海に流れ海藻が育ち、海の中に海藻の森ができます。

このように豊かな森が、林業や農業、漁業などの基盤をつくっています。しかし、人口増加と都市の巨大化によって、森と人々との距離が遠く離れてしまい、「木に花が咲くんですか?」と聞いてしまうほど、身近な自然すら現代人は忘れてきてしまっています。

ニホンミツバチが教えてくれたこと

吉川さんはニホンミツバチと出会い、そのハチが森をつくる生き方は、「他者を豊かにしながら、その豊かな森の中で生きることが幸せ」ということを教わり、自分の周りの人や自然を豊かにできる役割を担える大人になることが、幸せに近づくこと。ミツバチと森を見て、豊かな自然環境や友人もつくりながら、そこで生きられることが、真の豊かさなのだと実感しました。

私はこの本に出会わなければ、木を植えれば森は豊かになるとずっと思っていたことでしょう。人間の勝手な思いが害虫・害獣・雑草などという言葉をつくったのだと感じました。
すべてのものは必要があるから存在している。それを忘れずに生きていきたいと思いました。