今月は、7月10日が参議院選挙の投票日、現在選挙戦の真っ最中。福島県は、全県で1名ということもあり、ほとんど選挙カーの声を聴くこともなく、平穏な日々である。

選挙によって国民の声が国会に反映し、世の中が良くなっていくと言うのは理想であるが、どうすれば良くなったと言えるのかも良く解らない状況になっているように思える。AIが進歩し、スマホで日常生活の多くが処理され、必要な情報は瞬時に手に入り、キャッシュレスで買い物はすみ、大変便利になっている。マイナンバーカードを作り、預金口座を登録し、健康保険証の利用を申し込むと20,000円の報奨金が出る。日常の個人情報を一生提供することを約束した見返りに貰える報奨金である。キャッシュレス化により、日々の購入履歴がAIに蓄積され膨大な個人情報を提供していく、経済活動のデータベース化に協力した見返りにポイントが提供される。デジタル社会は素晴らしい、日本は遅れているから世界に追いつかなければと、政府はなりふり構わずデジタル社会への推進を加速している。

デジタル社会とは、どのような社会なのか。国に国民の個人情報が詳細に集積され、日々の行動もすべて把握された超管理社会、これはAIのデジタル情報として蓄積され、瞬時に検索が可能となる。便利さの代償として、国とこれに繋がるIT関連企業に情報を委ねることで、国の政策決定には逆らえない超管理社会が現出する。

デジタル社会への歩みは、2000年の小泉政権下の「行政改革大綱」に始まる。ここにおいて、電子政府の実現が明記され、その後の骨太方針に引き継がれ、現在に至っている。骨太方針とは、経済財政諮問会議が政府に提出する報告書で、これが閣議決定されると政府の政策決定の基本方針となる。2020年の骨太方針が12月に出され、その月にデジタル庁の設置が決定され2021年9月には発足している。20年来の懸案事項が、コロナ禍のどさくさ紛れに一挙に進められようとしているように見える。

国民の命に関わる情報の国による一元管理には、便利さの代償としての多くのリスクが横たわる。ⅰ集中のリスク(災害時の機能不全)、ⅱ管理システムのリスク(IT企業への管理委託によるセキュリティへの不安)、ⅲデータ活用上のリスク(政策の改悪化目的に利用されることへの懸念)、リスク回避のためには、リスク対策を充分に検討し、国民の命を大切にした政策を実行する政府の中で初めて生かされるものであろう。国の良識の府として参議院の使命は重い。