衆議院解散による総選挙は、自民党が過半数割れの結果に終わった。安倍政権から続いた自民党が過半数を占める政権運営は終わりを迎えた。今回の選挙の一番の課題であった政治改革は、この結果により前進することになることは間違いない。

これにより内閣による閣議決定だけで、法改正や政策決定はできなくなる。国会の場が真に決定の場としての役割を取り戻すことを願う。

行政府と議会の役割、司法権の独立、一党独裁の安定政権が続くとこれらの役割が機能不全となる。国会の審議は形骸化し、閣議決定が国会の審議に取って代わり、予算には、多くの利権を生み、それが政治献金の温床ともなっている。裁判官も公務員であることから、予算と人事権を持つ政府に独立性を維持することは難しくなる。安定政権を永続させるために、権力の一極集中を加速され、財源を中央政府の管理下に置くための政策が推し進められる。政権与党が過半数割れをすることで、これらが必然的にできなくなると言うことになる。

2日の新聞(福島民報)朝刊に「政府は1日、『防災庁』の設置準備室発足を発足させた。石破茂首相の看板政策の一つで、2026年度中の創設を目指す。」と報じられた。自然災害が激甚化、巨大地震への危機意識の高まりの中で「防災庁」への役割に期待したい。この新たな「防災庁」の内容は、これからの法整備、事業計画、予算、運営組織等々、一つ一つ議論をつくして行かなければならない。

防災は、予防対策の善しあしで、災害が起きたときの災害規模を大きく左右する。災害は自然災害と人災との複合災害であることが多い。その地域を知り尽くした地域住民からの予防対策への意見を反映させ、十分検討しておくことが大切となる。ハザードマップを無視した開発、老朽原子炉の再稼働、環境保護を無視した乱開発等によって自然災害の被害を大きくする。激甚災害時の初動体制は重要であるが、政策や国の認定基準等の見直し、現場の意見を反映できる予防対策、これには地方の自主性を高めるための国による後方支援が大切となる。

「国民の命を守る」ことは国の使命であり、この視点を忘れずに多くの議論を重ねていくことは国会の役割となる。「防災庁」に命を吹き込むことができるかどうかは、これからの与党・野党の政権運営に大きく掛かってくる。