2025年度の「経済財政白書」(内閣府)が書店の店頭に並ぶ。
7月29日に閣議に提出され、2025年版として出版(令和7年8月20日発行)されており、誰でも購入することができる。日本社会の一年間の動きを、統計資料をふんだんに取り込んで最も幅広くまとめられている権威ある報告書である。昔(昭和22年)は「経済白書」といわれていたが、平成13年から「経済財政白書」となり現在まで79年間続いている。今年の副題は、「内外のリスクを乗り越え、賃金を起点とした成長型経済の実現へ」とうたっている。切ないまでの願いを込めた願望のように聞こえてくる。
9月2日の朝刊(福島民報)に「エンゲル係数歴史的高水準」との見出し、「家計の支出に占める割合(エンゲル係数)が、歴史的な高水準に達していることが1日、共同通信の分析で判明した」と報じられる。9月に入っても続く猛暑の日々、水不足を案じていると一瞬にして1か月分の雨が降る。9月1日は防災の日、南海トラフ巨大地震への備えを呼びかける報道も目立つ。
世界を巻き込み繰り広げられるトランプ外交、「抗日勝利80年」(9月3日)を記念する式典外交と中ロ朝の対米政策、中東情勢も含めて目が離せない。国内政治では石破おろしと政争の嵐が吹き荒れている。
どこを見ても不安と危険で溢れている。この内外のリスクを乗り越えるためにはどうすれば良いのか?トランプさん、習さん、プーチンさん、みんなで仲良くしてくださいと言えれば少しは良くなるかもしれないが、現実には、意思を伝える手段もない絵空事でしかない。まずは周囲の人たちとの関係性を強め、「命」を守り合うための話し合いと行動を始めないことには何事も始まらない。私たちは、一人一人それぞれの生活を営む生活者であることからすれば、日々の生活費に占める食料費の割合であるエンゲル係数は、生活の状況を身近に反映するデータといえる。白書では、2025年前半までの経済動向を景気回復局面と位置づけている。その要因を、「コロナ禍からの回復もあってサービス業がけん引、国内民間最終需要」としている。それは、サービス業に含まれるスマートフォンやインターネットの普及、食料品等の価格の高騰による出費の増加による。それが景気の回復というなら、エンゲル係数を押し上げ、生活の豊かさにはまったく結びついていない。
溢れる情報に流されないためには、私たち一人一人が生活者の視点で素直に判断していく訓練が必要となる。


