11月ともなると、日に日に日の入りが早くなり、記録的な猛暑も初雪の話題に変わっていく。吾妻山の初冠雪を見ると、雪が里に降りてくるのも間近となる。クマをはじめとする野生動物たちは、寒い冬を生き抜くために食いだめに余念がない。
このクマたちに異変が起きている。連日のクマのニュース、単なる目撃情報だけでなく、民家に上がりこんでいたり人を襲ったりと、あまり聞いたことのない行動を取るクマが多くなっている。ツキノワグマは本来おとなしく、人がいるのが分かれば近づいてこないといわれていた。それがニュースを見ているとクマから人を襲うケースが散見されるようになっている。一部のクマが、人間をエサと認識して襲うようになっているとすれば、野獣として駆除するしかない。危害を及ぼす野獣として、警察や自衛隊がライフル銃の使用により本格的な駆除に国が動き始めてきた(10月31日福島民友)。
しかし、昔からクマは「山の神」として大切にされ、里山のマタギとともに共生してきていた。ツキノワグマの行動圏は、オスでは30~100キロメートルと広範囲を移動し、メスでも5~30キロメートルといわれている。マタギは、クマを求めて冬の奥羽山脈を移動していた。クマもまた100キロメートルと広範囲に移動するとすれば、人目を避けて移動できる山など福島周辺ではなくなっている。吾妻山のふもとに広がる先達山のメガソーラー、吾妻高原牧場跡地の風力発電所の風車、そのために開かれた工事用道路、市内から眺めただけでも震災前の景色からは一変している。野生動物たちの生活圏を奪い、環境破壊を続ける人間社会への生き残りをかけた抵抗のようにも思えてくる。クマを野獣として無差別の駆除を始めれば、そんなに時間をかけずほとんどが駆除されてしまうものと思われる。既に西日本では絶滅危惧種となっており、東北もその仲間入りをすることになる。
それでいいのか?自分達の生活する場としての地域の自然環境を考えるとき、クマとの共存を考えていかなければ、野生のクマは絶滅し、動物園でしか見ることができない存在となってしまう。クマの安心して暮らせる自然林(ブナ林)を復活させながら、一定の広大な山林を地域で守っていくこと、それは自然の中で生かされている人間の自然との共生を考える上で避けては通れない課題となっている。


